企業社会 私たちが考えるもうひとつの視点

新しい産業社会を展望するビジネスパースンの視点から、仕事や政治経済にまつわる疑問、解決方向等をゆるいペースで綴っていきたいと思います。

マネージャーは警戒せよ。今さら聞けない三六協定

Q;部下が成果を出そうと、残業も厭わず頑張っています。同僚からはあれは三六協定違反ではないかとささやかれていますが、今さら聞くのも恥ずかしいですが、三六協定って何ですか? 違反だとしても、会社のために頑張っているのに、何か問題があるのでしょうか?

A;三六協定とは、時間外労働や休日労働について決めた協定のことです。この協定は一般的には労働者の代表である労働組合と締結します。

 労働基準法第36条に基づくことから一般的に三六(サブロク)協定と呼ばれていますが、正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」です。

 三六協定を締結しないまま残業や休日出勤をさせれば法律違反となりますし、会社は従業員がたとえ1人でも届け出なければ、法定労働時間外に働かせることはできません。

 あなたの会社で三六協定の届出処理を上司が行っているはずです。

 成果を求めるあまり、部下をサービス残業に追い込んだり、または部下の意思で自ら長時間労働しているのを見過ごすことは、上司である管理者としては法律違反を起こしていることになります。

 特に、テレワークの普及で、見えないところで部下が仕事をしているという労働環境が増えたことで、勤務実態が把握しづらくなっています。そのような状況ですら、労働基準法の責任からは免れないのです。

 2019年に改正労働基準法が施行されました。本法律などを総称して、「働き方改革関連法」と呼ばれています。多様な働き方を認めるとともに、ルールの厳格化も図られました。さらに違反が判明した労働者1人あたり6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。部下が残業も厭わず仕事をしたいという前向きの考えであったとしても、会社のため、あなた自身のために、順法の精神で適切な指導をしましょう。

 さて、あなたの周りには、派遣社員フリーランス・ギグワーカー等、非正規ワーカーが少なからずいると思います。中には偽装請負に近い形で、派遣先で指示をして働かせている企業があると聞いています。正規社員は三六協定に従うが、非正規ワーカーは関係ないだろうと思われるかもしれませんが、日本共産党の山添議員の国会質疑(2023年11月1日)でもはっきりしましたが、厚労省もギグワーカーであっても、派遣先の指示・命令で仕事をさせられている場合は、労働者と見なされ、労働基準法の適用となることが明確になっています。

 「失われた30年」=コストカット経済の元凶の一つが、非正規ワーカーの増大であり、先進国の中でも稀有な状態に日本は追い込まれ、これが経済を弱体化させてしまいました。非正規ワーカーをコストカットの手段として見るのではなく、雇用形態の一つとして尊重し、その上で仕事の成果、会社全体の業績向上を実現する、正しいリーダーになるべく頑張りましょう。

(阿)